2025年 12月 20日
仕事ができない 発達障害 特徴 | キズキビジネスカレッジ
このコラムをお読みのあなたは、職場で思うように仕事が進まず、もしかしたら発達障害が原因ではないかと悩んでいませんか?
「何度も同じミスを繰り返してしまう」「上司の指示がうまく理解できない」「職場の人間関係がうまくいかない」――こうした悩みを抱えながら、自分を責めてしまう方は少なくありません。しかし、それは決してあなたの努力不足や能力不足ではなく、発達障害の特性が影響している可能性があります。
近年、「大人の発達障害」という言葉が広く知られるようになり、仕事上の困難を抱える発達障害のある人の存在が社会的に認知されるようになってきました。それに伴い、発達障害のある人ができる仕事術や、職場の人ができる配慮についても、様々な方法や意見が交わされるようになっています。
このコラムでは、仕事ができないと感じる発達障害のある人が抱えやすい困難の特徴、その背景にある原因、そして具体的な対処法について詳しく解説します。また、一緒に働く人ができる対応についても紹介しますので、職場での理解を深めるためにもお役立てください。
仕事ができないと悩んでいる発達障害のある方、そしてそのような方を支えたいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
「発達障害だから仕事できない」とあきらめる必要はありません
発達障害は脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。確かに、特性によって苦手な業務や場面は存在します。例えば、ASDのある人であれば、特定の場面におけるコミュニケーションに困難があることで、周囲の同僚とうまくいかないことがあります。また、ADHDのある人は、一定の条件下でミスをしやすいため、修正や訂正の作業に追われて、結果として多くの仕事を抱え込むことも少なくありません。
しかし、発達障害の特性は、努力だけではどうにもならない面がある一方で、適切な環境や支援があれば十分に力を発揮できる可能性を秘めています。
中には、仕事上の困難を自分の努力不足や甘えのせいだと思い詰めて、うつ病などの二次障害を発症する人もいます。けれども、発達障害の特性は、本人の意志や性格の問題ではなく、脳の構造上の特性によるものです。そのため、「職場の人と同じように仕事ができない自分はダメだ」などと思い詰める必要はまったくありません。
発達障害の特性が原因で仕事ができないとあきらめるのではなく、自分の特性ではできないこともあるのだと受け入れることから始めてみてください。その上で、できないことではなく、できることに着目することが大切です。
人によっては、「みんなと同じようにできないこと」を受け入れることが難しいかもしれません。しかし、自分の特性を受け入れることで、「自分は何ができるか」という方向に思考が切り替わり、新しい対策が見えてくる場合が多いのです。
ぜひ、「仕事ができない」とあきらめる前に、ご自身の特性を理解して、その特性を受け入れてみてください。そして、できることに目を向け、適切な支援や環境調整を行うことで、あなたらしく働ける道が必ず見つかるはずです。
仕事ができないと悩む発達障害のある人が抱えやすい仕事上の困難4選
発達障害の特性によって異なりますが、人によって仕事上で困難になるケースがあります。仕事をする際は自分が何を苦手としているかを理解しましょう。
この章では、発達障害のある人が抱える仕事上の困難について解説します。ただし、ここで紹介する事例はあくまで一例です。実際のあなたの状況と異なることもあるでしょう。あくまで参考としてご覧ください。
なお、前提として、いずれの場合も、まずは医師やカウンセラー、発達障害のある人をサポートする支援機関などに相談し、自分に必要なサポートを確認することから始めましょう。
困難①業務の遂行が難しい
1つ目の困難は、業務の遂行が難しいことです。発達障害には、業務に支障をきたすさまざまな特性があります。
ADHDのある人であれば、ミスや確認作業の不手際が多いことで悩むこともあるでしょう。また、ASDのある人であれば、意思疎通がうまく図れないなどがあるでしょう。
もちろん、ある程度は工夫することでカバーすることも可能です。しかし、努力だけで全てを補うことは難しいことも当然あります。それゆえ、「がんばってはみたものの業務遂行が難しい」と感じて、「仕事ができない」と思うようになる人が多いようです。
例えば、ADHDのある人の場合、注意が散漫になりやすく、細かい作業でのミスが頻発することがあります。書類のチェック漏れ、数字の入力ミス、約束の時間を忘れるなど、本人は気をつけているつもりでも、結果としてミスが重なってしまうのです。また、複数のタスクを同時に進めることが苦手で、優先順位をつけることに困難を感じることもあります。そのため、締め切りギリギリになって慌ててしまい、さらにミスが増えるという悪循環に陥ることもあります。
一方、ASDのある人の場合、曖昧な指示や暗黙のルールを理解することが難しいため、「適当にやっておいて」「いい感じに仕上げて」といった抽象的な指示では、どこまでが「適当」なのか、何が「いい感じ」なのかがわからず、作業が進まないことがあります。また、職場での雑談や社交的なやり取りが苦手で、コミュニケーションの場面で孤立してしまうこともあります。さらに、感覚過敏がある場合、オフィスの蛍光灯の明るさや空調の音、周囲の話し声などが気になって集中できず、業務効率が落ちることもあります。
このように、発達障害の特性によって、業務遂行に様々な困難が生じることがあります。しかし、これらは本人の怠慢や能力不足ではなく、脳の特性によるものであることを理解することが重要です。
困難②自分の特性に関する理解を職場で得づらい
2つ目の困難は、自分の特性に関する理解を職場で得づらいことです。発達障害に関する認知は拡大していますが、全員が理解をしているわけではありません。
特性に関する配慮を求めづらい可能性もあるため、発達障害のある人、特に発達障害グレーゾーンのある人の場合は、発達障害の確定診断がないため、医学的かつ客観的に自分の特性を説明しづらいです。
仕事や日常生活に影響する特性があるにも関わらず、障害者手帳を取得できなかったり、障害者雇用での就労ができなかったりするため、発達障害のある人とはまた別の困難を抱えることがあるでしょう。
例えば、職場で「もっと集中してください」「何度も同じミスをしないでください」と注意されても、本人は既に精一杯努力しているのに、それが周囲に伝わらないというジレンマがあります。また、「普通はこうするものだ」「常識的に考えれば分かるでしょう」といった言葉で片付けられてしまい、自分の困難を理解してもらえないまま、さらに追い詰められてしまうこともあります。
特に、発達障害グレーゾーンの人の場合、診断がないために「障害があるわけではないのだから、できて当然」と見なされがちです。しかし、実際には日常的に困難を感じており、その苦しさは診断の有無に関わらず存在します。診断書がないために合理的配慮を求めることもできず、「甘えている」「やる気がない」と誤解されることもあります。
このような状況では、本人が孤立し、自己肯定感が低下してしまうリスクが高まります。職場での理解を得るためには、まず自分自身が自分の特性を正しく理解し、必要に応じて医療機関や支援機関の助けを借りながら、適切に説明できるようにすることが大切です。
困難③誰に相談していいかわからない
3つ目の困難は、誰に相談していいかわからないことです。職場で発達障害があることを公表せずに働いている人は多くいます。
そうした人は、発達障害の特性に伴うミスや問題から「能力がない」と判断されて、同僚や上司などの職場の人から適切な評価を得られないという状況に陥ることがあります。
「仕事ができない」と思うようになったとしても、周囲の人に打ち明けることができず、悩むケースが少なくありません。その結果、そのつらさを原因に仕事ができないと思うようになったり、退職を検討するようになったりするのです。
また、発達障害グレーゾーンの場合は、確定診断が下りていないことから、医師に相談していいものかどうか、迷うことが多いでしょう。「診断がないのに相談してもいいのだろうか」「もしかしたら自分の思い込みかもしれない」と不安になり、結局誰にも相談できないまま、一人で抱え込んでしまうことがあります。
さらに、職場の上司や同僚に相談しようと思っても、「どう説明すればいいのかわからない」「理解してもらえないのではないか」「評価が下がるのではないか」といった不安から、相談をためらってしまうこともあります。特に、これまで「普通に」働いてきた人ほど、自分の困難を認めることに抵抗を感じやすく、相談のハードルが高くなる傾向があります。
こうした困難を抱えている場合、支援機関に相談することをオススメします。発達障害者支援センターや就労移行支援事業所などでは、診断の有無に関わらず、仕事上の困りごとについて相談することができます。専門的な知識を持ったスタッフが、あなたの状況を丁寧に聞き取り、適切なアドバイスや支援につなげてくれます。
困難④二次障害がある
発達障害の二次障害があることで働けないということも、よく聞く困難の1つです。
発達障害の二次障害とは、発達障害や発達障害グレーゾーンの傾向・特性に伴って発生する精神障害やひきこもりなどの二次的な困難や問題のことです。
発達障害のある人は、その特性の影響から生活や仕事での困難が多く、ストレスを抱えやすい傾向にあります。職場では、正確な処理やコミュニケーションを求められます。うまく対応できなければ、上司などの職場の人からの注意や叱責を受けることもあるでしょう。
こうした発達障害の特性に伴って生じる疲労やストレスが積み重なった結果、何らかの二次障害が発生する可能性があります。その二次障害の症状や状況による様々な困難・問題に悩まされ、働けなくなったり、退職に至ったりすることもあるのです。
二次障害として代表的なものには、うつ病、適応障害、不安障害、パニック障害などがあります。これらの精神的な不調が現れると、朝起きられない、職場に行くことが怖い、常に不安で落ち着かない、突然動悸や息苦しさに襲われるといった症状が出ることがあります。また、長期間のストレスにより、身体的な不調(頭痛、胃痛、不眠など)が現れることもあります。
中には、うつ病などの治療のために通院したタイミングで、はじめて自分が発達障害であることを知ったという人もいるそうです。つまり、二次障害が発覚してから、その背景に発達障害があったことが判明するケースも少なくないのです。
二次障害がある場合は、二次障害の治療を行うとともに発達障害の特性への対応をしていくことをオススメします。二次障害の症状が落ち着いてきたら、改めて自分の特性を理解し、働きやすい環境を整えていくことが大切です。焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。
仕事ができないと悩む発達障害のある人ができる対策:種類別に解説
この章では、発達障害のある人ができる対策について種類別に解説します。それぞれの特性に応じた具体的な工夫を知ることで、日々の業務がより円滑に進むようになるでしょう。
対策①ASDのある人ができる対策
ASDのある人は具体的には、以下のような困難を抱えやすいと言われています。
ASDのある人が仕事で直面しやすい困難には、人間関係がうまくいかない、職場の人とコミュニケーションをうまく取れない、雑談についていけない、関係性を理解しづらい、職場の状況や上下関係を理解しにくい、TPOに合った行動ができない、職場で求められるマナーや適切な服装がわからない、名前を呼ばれても反応しない、質問の意図や発言の狙いを察することができない、身振りや表情の意味を読み取れない、さじ加減がわからない、自分だけのルールにこだわる、周囲から「話を聞いていない」と誤解されやすい、報告、連絡、相談をうまくできない、決まった順序に強いこだわりがある、予定が変わるとパニックになりやすい、暗黙のルールなど明示されていない決まりに疎い、感覚過敏があるといったものがあります。
仕事の現場では、取引先や上司や同僚などの職場の人など、さまざまな人間関係が存在しますが、ASDのある人はそれらの関係を意識することが苦手です。
また、他人の話をさえぎったり、相手の本音に気づかず傷つけたりするなど、相手に不快感を与えることもあるでしょう。ほかにも、漠然とした指示を理解するのが不得意なASDのある人もいます。
業務処理能力に問題はなくても、コミュニケーションが上手く取れないため、「仕事ができない」という印象につながる傾向があります。
こうした困難に直面せず、落ち着いた環境で働けるかどうかが、仕事をする上で重要になります。ASDのある人が仕事上の困難に対してできる対策は、以下のとおりです。
まず、曖昧な指示ではなく、具体的な指示を求めることが大切です。「これ、やっておいて」「いい感じに仕上げてね」といった抽象的な指示では、どこまでが求められているのかがわからず、混乱してしまいます。そのため、「何を」「いつまでに」「どのような手順で」「誰に報告するか」といった具体的な情報を確認するようにしましょう。
次に、話を聞くときは、相手の顔を見てあいづちを打ちながら聞くことを心がけてください。視線を合わせるのが難しければ鼻のあたりを見るようにすると、相手には目を見ているように見えます。また、あらかじめ「すみませんが、目を見て話すと緊張してしまうんです」と伝えておくことで、相手の理解を得やすくなります。
さらに、上司に「報告、連絡、相談」をしてよいタイミングをあらかじめ確認しておくことも有効です。「いつでも声をかけてください」と言われても、実際にはタイミングがわからず躊躇してしまうことがあります。そのため、「毎日○時に進捗報告をする」「困ったことがあったらすぐにメールで連絡する」といった具体的なルールを決めておくと安心です。
予定の変更にパニックになりやすいことを伝え、予定の変更が予想されるときには理由とともに早めに教えてもらえるようにしておくことも大切です。急な変更は大きなストレスになるため、できるだけ事前に情報を得られるようにしておきましょう。
暗黙のルールを明文化して理解することも重要です。例えば、「今度遊びにおいで」「またご飯でも行こう」と言われても、社交辞令の可能性を考慮し、電話やメールで確認を取ってからにする、相手の体型や外見のことは口にしない、話す内容や口調を相手や場面によって切り替えるなど、職場での暗黙のルールを具体的に言語化して理解するようにしましょう。
過敏な感覚をツールでカバーすることも効果的です。聴覚過敏の場合、ノイズキャンセリングイヤホンを使うことで、周囲の雑音を軽減し、集中しやすい環境を作ることができます。視覚過敏の場合は、照明の明るさを調整したり、サングラスを使用したりすることも検討してみてください。
最後に、感謝や謝罪の言葉を、スムーズに伝えられるように練習しておくことも大切です。「ありがとうございます」「申し訳ございません」といった基本的な言葉を、適切なタイミングで自然に言えるようにしておくことで、職場でのコミュニケーションが円滑になります。
対策②ADHDのある人ができる対策
ADHDのある人は具体的には、以下のような困難を抱えやすいと言われています。
ADHDのある人が仕事で直面しやすい困難には、確認作業がうまくいかない、スケジュールやタスクの管理が苦手、整理整頓ができない、締切を守りづらい、忘れ物や記入漏れなどのミスが多い、物を失くすことが多い、興味のあることは集中しすぎて過集中になる、気が散りやすい、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ち着かない、他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする、優先順位をつけることが苦手で、場当たり的に行動する、場に合わせた発言をするのが難しい、段取りを考えながら並行作業をすることが苦手といったものがあります。
ADHDのある人は、確認作業やスケジュール管理が苦手な傾向にあります。
やるべきことを先延ばしにしてしまったり、計画的に物事に取り組んだりすることが苦手なため努力不足、能力不足と誤解されることがあります。また、整理整頓ができないという仕事上の困難もあります。書類の整理が苦手なため、机の上が散らかりやすく、場合によっては書類を紛失することもあります。
ほかにもこつこつと取り組むことが苦手で、期限ギリギリになり、最後に焦ってミスをすることもあります。そして、失敗をすることで余計にパニックになり、悪循環に陥ることもあります。
それらの行動から、職場の人からだらしない、怠惰だと受け取られることも、ADHDのある人が抱える困難と言えるでしょう。
ADHDのある人が仕事上の困難に対してできる対策は、以下のとおりです。
まず、「忘れっぽい」「ミスを防ぎたい」とあらかじめ上司や同僚に伝えた上で、メモを取るようにしておくことが重要です。自分の特性を周囲に伝えることで、理解を得やすくなり、サポートを受けやすくなります。メモを取る際は、手書きのノートでもスマートフォンのメモアプリでも、自分が使いやすい方法を選びましょう。
次に、スマホのアラーム機能などを利用して、予定していた作業にリマインドを行うことも効果的です。タスク管理アプリやカレンダーアプリを活用し、締め切りや重要な予定の前に通知が来るように設定しておくと、忘れることを防げます。また、定期的に行う作業については、毎日同じ時間にアラームを設定することで、習慣化しやすくなります。
仕事と違うことを考えそうになったときに、顔を洗ったり、背伸びをしたりして自分でストップをかける習慣をつくることも大切です。集中力が途切れそうになったら、一度立ち上がって軽く体を動かす、深呼吸をする、水を飲むなど、自分なりのリセット方法を見つけておきましょう。
予定・指示・作業工程・時間割などを紙に書き出して視覚化し、見てわかるようにすることも非常に有効です。頭の中だけで管理しようとすると、情報が混乱しやすくなります。ホワイトボードや付箋、チェックリストなどを使って、やるべきことを目に見える形にしておくことで、タスクの優先順位がつけやすくなり、抜け漏れを防ぐことができます。
また、デスク周りの整理整頓のルールを決めておくことも大切です。「使ったものは必ず元の場所に戻す」「毎日退勤前に5分間片付ける時間を作る」「書類は色分けしたファイルに分類する」など、シンプルで続けやすいルールを設定しましょう。整理整頓が苦手な場合は、収納グッズを活用して、物の定位置を決めておくと管理しやすくなります。
さらに、タスクを小さく分解して、一つずつ確実にこなしていくことも重要です。大きなプロジェクトや複雑な作業は、一度に全体を把握しようとすると圧倒されてしまいます。そのため、「まずは資料を集める」「次にアウトラインを作る」「その後、本文を書く」といったように、作業を細かいステップに分けて、一つずつクリアしていくことで、達成感を感じながら進めることができます。
対策③LD/SLDのある人ができる対策
LD/SLDのある人が抱える仕事上の困難は、特定の情報理解が難しいことや情報伝達の手段が合わないことです。
どの情報が苦手なのかは、LD/SLDのある人それぞれの特性によって異なります。自分の苦手な情報処理が必要な仕事では困難を抱えやすいでしょう。
一方で苦手な情報を使わない仕事であれば、困難を減らせます。
例えば、書く・計算することに困難があるLD/SLDのある人は、PCのキーボードや電卓といったツールが日常的に用いられている職場では、あまり問題になることはないでしょう。他に読むことや聞くこと、推論することなどに困難があるLD/SLDのある人についても、苦手な情報をツールで補助する、または形式を変えるなどの工夫をすれば、仕事上の困難を減らすことができます。
LD/SLDのある人が仕事上の困難に対してできる対策は、以下のとおりです。
まず、会議などで使用する書類は、先に目を通すためにあらかじめ渡してもらうことが有効です。読むことに時間がかかる場合、会議中にその場で資料を読みながら内容を理解するのは難しいことがあります。事前に資料を受け取り、自分のペースで読んでおくことで、会議での理解度が大きく向上します。
次に、使用したい道具について、あらかじめ周囲に伝えておくことも大切です。例えば、「読み書きが苦手なので、タブレットでメモを取ります」「計算が苦手なので、電卓を使用します」といったように、自分が使うツールについて事前に説明しておくことで、周囲の理解を得やすくなります。
電子ファイルのテキストを、自分の得意なフォントや文字幅のテキストに変換することも効果的です。読みやすいフォント(例えば、UDフォントやゴシック体など)に変更したり、行間を広げたり、文字サイズを大きくしたりすることで、読みやすさが格段に向上します。紙の書類はスキャンしてテキスト化し、その後変換することも可能です。
署名をハンコなどで代用することも検討してみてください。手書きの署名が難しい場合、印鑑やデジタル署名を使用することで、書類の処理がスムーズになります。職場によっては電子印鑑の使用が認められている場合もあるので、確認してみましょう。
筆記のメモが苦手なことを伝え、メモはスマホ・タブレット・PCで取ることも有効です。手書きでメモを取るのが難しい場合、デジタルデバイスを使うことで、より速く正確に記録することができます。音声入力機能を使えば、さらに効率的にメモを取ることも可能です。
また、読み上げソフトや音声入力ソフトを活用することもおすすめです。読むことが苦手な場合は、テキストを音声で読み上げてくれるソフトを使うことで、内容を理解しやすくなります。書くことが苦手な場合は、音声入力ソフトを使って、話した内容を文字に変換することができます。
さらに、図やイラストを活用して情報を整理することも効果的です。文字だけの情報よりも、視覚的な情報の方が理解しやすい場合があります。マインドマップやフローチャートなどを使って、情報を視覚化することで、全体像を把握しやすくなります。
仕事ができないと悩む発達障害のある人と一緒に働く人ができる対応5選
対応①特性を理解する
前提として大切なのは、特性によって生じている出来事は本人の努力不足のせいではないと理解することです。
発達障害は脳の処理機能に偏りが生じる、脳の構造上の特性です。そのため、本人の努力次第ではどうにもならない面があります。
まずは、何ができて、何ができないか、その人自身の特性を理解することから始めましょう。発達障害のある人と一緒に働く人の中には、その人の特性を理解しないまま、単に「仕事ができない」と決めつける人も見受けられます。
しかし、発達障害のある人は、オールラウンドに仕事がこなせるタイプよりも、ひとつのことに集中できる業務、環境の中で力を発揮できるタイプの方が多いと言われています。
その特性について理解した上で、できないことではなく、できることに着目して、仕事をお願いしたり、協働したりすることを心がけて行くことが大切です。その上で、無理なく、その人の苦手をフォローする仕組みを作れないかを考えていけると互いに仕事がしやすくなるでしょう。
特性を理解することが、発達障害のある人との接し方を考える上で、出発点になります。例えば、ADHDのある人は、細かい確認作業は苦手でも、新しいアイデアを出すことや、興味のある分野での情報収集には優れていることがあります。ASDのある人は、対人コミュニケーションは苦手でも、ルーティンワークや細部にこだわる作業では高い精度を発揮することがあります。
また、特性を理解することで、その人がなぜそのような行動を取るのかが見えてきます。例えば、「報告が遅い」と感じる場合、それは怠けているのではなく、「いつ報告すればいいのかわからない」という困難を抱えているのかもしれません。「同じミスを繰り返す」場合も、注意力の問題ではなく、作業手順が複雑すぎて覚えられないのかもしれません。
特性を理解することで、適切なサポートの方法が見えてきます。そして、その人の強みを活かした業務配置を考えることができるようになります。
対応②その人が理解しやすいように説明をする
発達障害の特性への理解が進んだら、それを具体的に業務で実践できるように落とし込んでみましょう。
その際、重要となるのが、その人が理解しやすいように説明をすることです。
マニュアルの利用や指示の出し方など、それまで職場で問題なく行われてきたことであっても、発達障害のある人にとっては理解しづらいところが多々あるかもしれません。
単にマニュアルを渡したり指示を出したりして済ませるのではなく、その人に理解しやすいように補足していくことが必要です。
最初は労力が必要になるかもしれませんが、特にASDのある人など、その人の型にはまれば、想定以上の成果を上げることもあります。ただ単に「仕事ができない」と見放すのではなく、その人にあったマニュアルを新たに作ることや、指示の出し方を変えられないかなどを、ぜひ考えてみてください。
例えば、既存のマニュアルが文字だけで構成されている場合、図やイラストを追加することで、視覚的に理解しやすくなります。また、作業手順を動画で撮影して共有することも効果的です。指示を出す際には、口頭だけでなく、メールやチャットで文字として残すことで、後から確認できるようにすることも大切です。
さらに、指示を出す際には、「なぜその作業が必要なのか」という背景や目的も一緒に伝えることで、理解が深まります。例えば、「この書類を○○さんに提出してください」だけでなく、「この書類は来週の会議で使うので、○○さんに提出してください」と伝えることで、作業の重要性や優先度が理解しやすくなります。
また、新しい業務を教える際には、一度に全てを伝えるのではなく、段階的に教えることも有効です。まずは基本的な作業を覚えてもらい、それができるようになってから次のステップに進むという方法を取ることで、混乱を防ぐことができます。
その人が理解しやすい方法を見つけるためには、本人とのコミュニケーションが不可欠です。「どのように説明されるとわかりやすいですか?」「どんなサポートがあると助かりますか?」と直接聞いてみることも大切です。
対応③具体的に伝える
気心知れた職員に対しては、どうしても「じゃああとは適当にやっておいて」など、抽象的な表現で指示を出してしまうときもあるでしょう。
しかし、発達障害のある人にとっては、どこまでが「適当」なのか、具体的な範囲に対して悩んでしまうことがあります。
気心知れた職員であっても、また、信頼できる職員であっても、発達障害のある人に対しては、できるだけ具体的な指示を出すよう心がけましょう。
また、業務内容を教えるときもざっくりとしたニュアンスではなく、どのフォルダを開き、どのファイルを使ってどのような業務をどれくらいの時間をかけて行うのかなど、細部まできちんと伝えることが大切です。
例えば、「この資料を整理しておいて」という指示ではなく、「この資料を、日付順に並べて、赤いファイルに綴じて、棚の一番上の段に置いておいてください。30分くらいで終わると思います」というように、具体的に伝えることで、作業がスムーズに進みます。
また、「いい感じに仕上げて」という曖昧な表現ではなく、「フォントはゴシック体、文字サイズは12ポイント、余白は上下左右2センチで、全体で3ページ以内にまとめてください」というように、具体的な基準を示すことが重要です。
さらに、締め切りについても、「なるべく早く」ではなく、「明日の午後3時までに」というように、明確な日時を伝えることで、優先順位がつけやすくなります。
具体的に伝えることは、発達障害のある人だけでなく、新入社員や経験の浅い職員にとっても有効です。誰にとってもわかりやすい指示を心がけることで、職場全体のコミュニケーションが円滑になります。
対応④特性障害に合わせた業務に就いてもらう
発達障害にはさまざまな特性があり、また人によってその現れ方が異なります。発達障害のある人には、ある面が苦手な一方で、別の側面が得意であったり、無理なく作業し続けられたりすることも少なくありません。
そのため、発達障害のある人に業務を任せるときは、本人から得意・不得意をヒアリングし、特性に合わせた業務に就いてもらいましょう。
例えば、不注意の特性が見られるADHDのある人に最後の確認作業を任せたり、細かな計算を伴う資料作成などをお願いしたりしても、その特性によって、確認漏れや多少の計算ミスが出る可能性もあります。
一方で、特定の業務には高い集中力を発揮して、素早く作業を進行できる可能性があります。中には、細かな数字に強く、細部まで見落としなくきちんとミスを見つけられるといった特性のある人もいるでしょう。
特性に合わせて仕事の割り振りや順序、配置を工夫することがよいパフォーマンスにつながります。発達障害のある人の多くは、適切な配置をすることができれば、問題なく一緒に働けるはずです。
例えば、ADHDのある人には、ルーティンワークよりも、変化のある業務や、短期集中型のプロジェクトを任せることで、その特性を活かすことができます。また、ASDのある人には、対人折衝が少なく、一人で集中して取り組める業務や、データ分析やプログラミングなどの論理的思考が求められる業務が向いていることがあります。
このような仕事環境を周囲が作ることで、発達障害のある人も自分の特性を一つの特徴と捉えることができ、業務に自信を持って取り組むことができるかもしれません。その人の特性をある種の個性として受けとめる周囲の姿勢が大切です。単に苦手な面を知るだけでなく、どの業務をお願いすれば成果を上げやすいかをぜひ考えてみてください。
また、業務の配置を考える際には、本人の希望や興味も考慮することが重要です。得意な分野であっても、興味がなければモチベーションが上がりません。逆に、多少苦手な分野でも、本人が強い興味を持っている場合は、工夫次第で力を発揮できることもあります。
定期的に本人と面談を行い、現在の業務についてどう感じているか、どんな業務に挑戦してみたいかなどを聞き取ることで、より適切な業務配置を実現できます。
対応⑤産業医や専門家の指示を仰ぐ
発達障害のある人を職員として迎え入れたときは、産業医や専門家、支援機関と連携して行くことが大切です。
専門家や支援機関との連携によって、発達障害に対して理解を深めながら働くことができます。
なお、自社に産業医がいない場合は、地域産業保健センターを利用することで、無料で適切なアドバイスを受けることができます。地域産業保健センター(地さんぽ)は、小規模事業者に対して産業保健サービスを提供している機関で、労働者の健康管理に関する相談や、職場環境の改善についてのアドバイスを受けることができます。
また、発達障害者支援センターや就労移行支援事業所などの専門機関に相談することも有効です。これらの機関では、発達障害のある人の特性に応じた職場での配慮方法や、コミュニケーションの取り方についてアドバイスを受けることができます。
さらに、本人が通院している医療機関と連携することも重要です。本人の同意を得た上で、主治医から職場での配慮事項について情報を得ることで、より適切なサポートが可能になります。
専門家や支援機関との連携は、職場の負担を軽減するだけでなく、発達障害のある人が安心して働ける環境を作るためにも不可欠です。困ったときには一人で抱え込まず、積極的に外部の力を借りることをおすすめします。
発達障害とは?
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
まず、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)です。ADHDは、不注意(集中力が続かない、忘れ物が多い、うっかりミスが多い)と多動性・衝動性(じっとしていられない、思いついたらすぐ行動してしまう)を主な特徴とする発達障害です。子どもの頃は多動性が目立ちますが、大人になると多動性は落ち着き、不注意の特性が残ることが多いと言われています。
次に、ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)です。ASDは、社会的コミュニケーションの困難さ、限定的で反復的な行動や興味、感覚の過敏さまたは鈍感さを主な特徴とする発達障害です。以前は自閉症、アスペルガー症候群などと細かく分類されていましたが、現在はスペクトラム(連続体)として捉えられています。
そして、LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)です。LD/SLDは、知的発達に遅れはないものの、読む、書く、計算するなどの特定の学習能力に著しい困難がある発達障害です。読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)などがあります。
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。
例えば、ADHDとASDの両方の特性を持つ人もいますし、ASDとLD/SLDを併せ持つ人もいます。そのため、一人ひとりの特性を丁寧に理解することが重要です。
また、発達障害は「グレーゾーン」と呼ばれる状態の人もいます。これは、発達障害の特性はあるものの、診断基準を満たすほどではない、または診断を受けていない状態を指します。グレーゾーンの人も、日常生活や仕事で困難を感じることがあり、適切なサポートが必要です。
発達障害は、適切な理解とサポートがあれば、その人らしく生きていくことができる特性です。「障害」という言葉から、できないことばかりに目が向きがちですが、発達障害のある人には、独自の強みや才能があることも忘れてはいけません。
まとめ:発達障害でも活躍することはできます
発達障害のある人は仕事全般ができないわけでは決してありません。
特性を理解した上で、それに合った仕事を与えられれば、充分活躍の機会は得られます。
そのため、仕事を続ける上では、周囲の人に特性を理解してもらうこと、相談することが大切です。場合によっては、医師や支援機関から職場に対して、障害特性について説明してもらうなどのサポートを受けるのもよいでしょう。
ぜひ、ひとりで抱え込まずに、周囲の人を頼ってみてください。
発達障害の特性は、確かに仕事をする上で困難をもたらすことがあります。しかし、それは「できない」ことを意味するのではなく、「やり方を工夫する必要がある」ことを意味しています。自分の特性を正しく理解し、適切なサポートを受けながら、自分に合った働き方を見つけることで、あなたらしく活躍できる場所が必ず見つかります。
また、職場の理解と協力も不可欠です。発達障害のある人が働きやすい環境を整えることは、結果として職場全体の生産性向上にもつながります。多様な人材が活躍できる職場は、イノベーションを生み出し、組織の成長を促進します。
このコラムが、少しでも仕事ができないと悩む発達障害のある人の、助けになれば幸いです。あなたは一人ではありません。適切なサポートを受けながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
よくある質問(1)
仕事ができないと悩む発達障害のある人が抱えやすい仕事上の困難を教えてください。
以下が考えられます。
業務の遂行が難しい:発達障害の特性により、ミスが多い、コミュニケーションがうまく取れないなど、業務を円滑に進めることが困難になることがあります。特にADHDのある人は確認作業や時間管理が苦手で、ASDのある人は抽象的な指示の理解や対人関係に課題を抱えやすい傾向があります。
自分の特性に関する理解を職場で得づらい:発達障害への認知は広がっているものの、すべての職場で理解があるわけではありません。特に診断を受けていないグレーゾーンの人は、客観的に特性を説明することが難しく、適切な配慮を求めにくい状況にあります。
誰に相談していいかわからない:職場で発達障害を公表していない人は、困難を抱えても相談できず、孤立してしまうことがあります。また、グレーゾーンの人は、医療機関に相談すべきか迷い、一人で悩みを抱え込んでしまうことも少なくありません。
二次障害がある:発達障害の特性に伴うストレスや疲労が積み重なった結果、うつ病や適応障害などの二次障害が発生することがあります。二次障害の症状により、働けなくなったり、退職に至ったりするケースもあります。
詳細については、こちらで解説しています。
よくある質問(2)
仕事ができないと悩む発達障害のある人と一緒に働く人ができる対応はありますか?
以下が考えられます。
特性を理解する:発達障害は脳の構造上の特性であり、本人の努力不足ではないことを理解することが大切です。その人の得意・不得意を把握し、できることに着目して業務を任せるようにしましょう。
その人が理解しやすいように説明をする:既存のマニュアルや指示の出し方を、その人に合わせて工夫することが重要です。図やイラストを追加したり、文字で記録を残したりするなど、理解しやすい方法を一緒に考えましょう。
具体的に伝える:「適当に」「いい感じに」といった曖昧な表現ではなく、具体的な基準や手順を明確に伝えることで、作業がスムーズに進みます。
特性に合わせた業務に就いてもらう:本人の得意・不得意をヒアリングし、その特性を活かせる業務に配置することで、高いパフォーマンスを発揮できる可能性があります。
産業医や専門家の指示を仰ぐ:地域産業保健センターや発達障害者支援センターなどの専門機関と連携し、適切なアドバイスを受けることで、より良いサポートが可能になります。
詳細については、こちらで解説しています。
よくある質問(3)
発達障害の特性があっても、自分に合った仕事を見つけることはできますか?
はい、できます。発達障害のある人は、オールラウンドに仕事をこなすタイプよりも、特定の分野に集中して力を発揮できるタイプの方が多いと言われています。自分の特性を理解し、得意なことを活かせる環境を見つけることで、十分に活躍することが可能です。就労移行支援事業所などの専門機関では、あなたの特性に合った仕事探しをサポートしてくれます。一人で悩まず、ぜひ相談してみてください。
「発達障害だから仕事ができない」と悩んでいませんか?特性の理解から具体的な仕事対策、職場での配慮までを丁寧に解説。前向きに働くヒントが見つかります。





